劇団四季のミュージカルを観たのは今回が初めて。
『オペラ座の怪人』は『エリザベート』と並んで好きな演目でしたが、生観劇は初。
ちなみに一番好きなのはラミン・カリムルーがファントム役を演じた2012年の25周年記念ロンドン公演のDVD。
というのも、『オペラ座の怪人』に限らず、海外原作のミュージカルは日本語訳がどうもしっくりこないことが多い。なぜなら日本語は英語に対し、日本語は1音の情報量が少ないため、間延びした印象というか、歌詞に幼稚な雰囲気が出がちなのだ。
情報量が少ない、というのは「愛してる」と伝えるときに日本語だと「あ・い・し・て・る」と5音使うのに対し、英語だと「アイ・ラヴ・ユー」の3音で済む。その上に、1音1音に「アイ(私は)」「ラヴ(愛す)」「ユー(あなたを)」と独立した意味が入るので、聴覚的な言語圧縮性が高い。
日本語は真逆なので、ミュージカルの日本語訳はどうしても物足りなくなりがち(個人的見解)。
というのもあって、実は『オペラ座の怪人』が大好きなのにもかかわらず、日本語版を一度も見たことがありませんでした。
日本語訳を受け入れられるだろうか……という不安も少々感じながら席についたものの、ひとたび幕が上がれば劇団四季が魅せるオペラ座の世界にのめりこんで楽しむことができました。
この記事では四季版『オペラ座の怪人』の歌詞や舞台演出についての感想を中心に書き連ねていきます。思い出した順番に書いているので色々ぐちゃぐちゃ。まあ、読めればいいのさ。
劇団四季『オペラ座の怪人』|席について
2階席のJ列辺り、ドセンターにて観劇。
大阪四季劇場は映画館並みに座席に勾配があるのと、クラス集合写真を撮るときみたいに前列の人の肩の上に顔を出す形になるので、ステージがとても見やすかった。
また座席のスペースも充分確保されており、窮屈な感じはしなかった。
「あ、これは見やすい」と開幕前から期待感が高まるタイプの座席。これ大事。
もうそれだけでリピートしたくなっちゃうよね。
劇団四季『オペラ座の怪人』|ステージについて
劇団四季には「壮大!!!!」ってイメージがあったため、意外とこぢんまりしていて「あれ?」となった……のもつかの間!!なんと大阪四季劇場!!奥行きが!!めちゃくちゃある!!
『オペラ座の怪人』といえば、クリスティーヌが鏡の向こうに呼び込まれ、あの有名すぎるリード曲(テーンテテテテテーンで始まるやつ)が見せ所。あの迷宮をファントムとクリスティーヌが歩き進んだのち、クリスティーヌをボートに乗せ高らかに歌うファントム……。
あのシーンでボートがステージ奥から手前に進んでくるのがめちゃくちゃわくわくした!!
それからシャンデリアも結構ちゃんと動くし、爆ぜる感じの演出もあったのは驚いた。「四季のオペラ座はすごい」、皆がそう口を揃えて言う理由めちゃくちゃわかった。
劇団四季『オペラ座の怪人』|歌について
ミュージカルはウィーン系(エリザベート等)、ロミジュリ、フランケンシュタイン、ウェストサイドストーリーあたりしか見たことないので間違っているかもしれないが、『オペラ座の怪人』はミュージカルの中でも群を抜いて歌が難しいのではと思っている。
というのも、題材が「オペラ座」だからね、劇中劇で相当難しい歌唱を求められているというか。
漠然と「四季は歌がうまい」というイメージがあったが、その思い込みを裏切らないほど、やはり四季は歌がうまかった。
上手だけど自己本位的で自信家風なカルロッタのコロコロ転がすような歌い方とか、素直にすげぇ!!てなった。私の求めていたカルロッタが大阪四季劇場に居た。
ミュージカルはタイトルロールや主人公の相手役だけでなく、いわゆる脇役や対比相手がどれだけ上手いかで没入感がかなり変わるよね。『エリザベート』で「うわ、今日いつもより泣ける」と感じる時、ゾフィーの演技と歌唱がすごく好きな日だったり、ルドルフの感情の入りが良い日だったりする。
これは歌というより音響のせいだと思うが、『オペラ座の怪人』で最も有名で重要なシーンの♪THE PHANTOM OF THE OPERA♪で歌唱が小さく感じられたのは少し残念だったかな。
舞台の奥行もあるし、音が吸収されちゃったのかもしれない。自分が2階席だったせいかもしれないな。S席で見たらそんなことないのかもしれない。
劇団四季『オペラ座の怪人』|歌詞について
『オペラ座の怪人』が大好きな癖に日本語版観劇を遠ざけていた最大の理由、それは「日本語訳の歌詞」。英語版の歌詞の言い回しが好きなので、日本語特有の圧縮や意味の欠落を受け入れられる自信がなかった。
だが、劇団四季のステージの前でそんな心配は無用だったし、そんな心配をした自分を恥じた。日本語版には日本語版の良さがあった。
“Think of me”を「どうぞ」、“Past the point of no return”は「もはや引けない」と、うまく音に合わせて歌詞をはめ込んでいてすごくよかった。
♪THE PHANTOM OF THE OPERA♪の歌詞のうち“inside my/your mind”の部分。本家直訳の「ザ・ファントム・オブ・ジ・オペラはあなた(私)の心の中に」って言い回しが好きだが、四季版歌詞の「そう、あなたね(私だ)」もクリスティーヌとファントムの間に走る緊張感がビシビシ伝わってきてよかったです。
劇団四季『オペラ座の怪人』|演出について
舞台の奥行を活かした演出は見ごたえがあった。
やはり個人的に感動したのが、クリスティーヌをボートに乗せ自宅へと招き入れるシーン。
あのボート、ファントムとクリスティーヌが降りた後も勝手に動いていたけどどうなっているんだ??
カーテンを活用した舞台演出もなかなかによかったな。
あと舞台を囲む額縁のようなセットの、頭上にある紋章っぽいところが取り外せるのは驚いた!
クリスティーヌ父の墓のシーンであの紋章にファントムが乗って高らかに歌いながら、舞台上に消えていくのはなかなか「怪人」感に溢れていた。
それからラウルがファントムの住処を目指して湖に飛び込む演出!!あそこがね~~~~すごく好き。えっすご!!てなりました。
四季は限られたステージ上の360度を持てあますことなく使うのが、ある種のアトラクションのようで楽しかった。個人的にミュージカルは総合芸術だと思って観劇することのほうが多いが、四季はテーマパークのショーを見るような気持ちで観劇するのも楽しいのかもね。
劇団四季『オペラ座の怪人』|まとめ
ミュージカルによっては日本で上演するにあたり曲の順番変えたりストーリー若干変えたりすることがままあるが、四季の『オペラ座の怪人』は原題とそこまで演出の違いはないように感じられた。
歌詞の言語の違いはあれど、本家のミュージカルが好きな私としては、その違いのなさは今回かなりうれしいポイントだった。(別に日本版の脚色のあるミュージカルが嫌いなわけではないし、それはそれで楽しんでいるが)
とにもかくにも、四季の『オペラ座の怪人』は本家ウェバー版が好きな人もしっかり楽しめる日本語版ミュージカルでした。
最初の歌詞に対する不安はどこへやら消え失せ、終演後にタンブラーとトートバッグを購入し、満足げに梅田駅へと足を向ける私でした。まだしばらく上演されるし、時間を作って再度見に行きたいところである。他にも『キャッツ』や『ノートルダムの鐘』も観たい。おわり。